機友会ニュースデジタル版第129回 新任教員の紹介 王 忠奎 先生

 初めまして、理工学部ロボティクス学科に着任しました王忠奎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は中国の出身で、2007年9月に来日し、2011年3月に立命館大学総合理工学専攻で博士号を取得しました。その後、立命館大学専門研究員とロボティクス学科の助教を経て、2019年4月から総合科学技術研究機構に移りまして、研究教員(准教授)として勤めてきました。
  
「研究内容」
 博士時代は柔軟物体のモデリングとシミュレーションの研究を始め、とりわけ食品のような外力で変形させた後に、元の形状に戻れないレオロジー物体のモデリングに着目しました。専門研究員時代からその研究成果を活用して、様々なアプリケーションを挑戦しました。2012年9月~2013年3月に客員研究員としてスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)に滞在し、白内障手術のためのマイクロロボットの開発グループに参加していました。中では、硝子体のモデリングとパラメータ推定に関する研究を担いました。日本に戻った後、京都府立医科大学の先生たちと共同で、扁平足の手術シミュレーションに関する研究を始め、いくつかの扁平足のモデルを構築したうえで手術シミュレーションを行い、術前と術後の圧力分布を比較することで、最適な手術パラメータを特定する研究を推進してきました。
  
 2015年頃から、食品を把持するソフトロボットグリッパの研究をきっかけに、ソフトロボティクス分野に入り、研究活動を続けてきました。様々な食品を対象としたロボットグリッパと、ロボットシステムに関する研究を行っています。その中、複数本のキュウリを同時に箱詰めするロボットハンドを開発し、現在は北海道の選果場で実証実験を行っています。また、天ぷらの自動盛り付けシステムや食器自動洗浄用ロボットシステムを構築し、立命館大学の生協食堂での実証テストも行っています。さらに、食品を自動的に認識させるため、深層学習を用いた認識手法の開発や食品力学特性と3D形状のデータベースの構築などといった研究も推進しています。これらの研究成果を活かして、人手不足の問題が深刻な食産業での自動化の推進に貢献したいと考えています。
  
 2022年4月からクラウドロボティクス研究室を立ち上げ、Society 5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)を支える柱であるクラウド、IoT、ビッグデータ、AIなどの技術を活用して、ロボットシステムの最適化と柔軟性を実現するための研究を幅広く推進し、様々な分野での実用化を目指しています。
  
「学生へのメッセージ」
 人生をベクトルとして考えてほしいです。ベクトルは方向とサイズを持つものです。方向はたとえば自分がやりたいことでしたら、サイズは努力の重なりに相当します。方向が間違っていれば、努力は無駄になりますし、方向が正しいとしても、努力がないと前に進みません。正しい方向を見つけるのは、決して簡単なことではありません。様々な知識と経験が必要となります。大学はこれらの知識と経験を効率的に獲得できる場の一つではあります。大学の先生たちは学生の皆さんが、正しい方向に向くように手伝います。ただ、ベクトルのサイズは皆さんの努力次第です。ぜひとも、大学を卒業する際の自分に悔いのないような大きなベクトルを描いて、そして充実した大学生活を送ってください。

これからは、どうぞ宜しくお願いします。 
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