機友会ニュースデジタル版第133回 西宮民和 氏(昭和62年卒)「旋盤用の新型パワーチャックが日本機械学会賞(技術)を受賞」

旋盤用の新型パワーチャックが日本機械学会賞(技術)を受賞
タイトル 「ジョー再成形を不要にする高精度パワーチャックの開発」
(株)北川鉄工所 KGhc 技術部 西宮民和
  
私は理工学部・機械工学科を1987年に卒業しました。在学中は大南研究室に所属し、当時助教授だった坂根先生にも大変お世話になりました。卒業後は(株)北川鉄工所に就職し、工作機器関連商品の開発に携わってきました。
この度、私が開発した技術が、2021年度日本機械学会賞(技術)を受賞しました。また、この技術は2019年に精密工学会中四国支部で技術賞、同年に精密工学会(全国)で「ものづくり賞」を受賞しています。就職してから開発一筋でやってまいりましたが、このような栄誉に浴することができ大変嬉しく思います。 
【受賞技術の概要】
旋盤用パワーチャックでワークを把握し、精度良く加工するためには、ジョーの把握面を旋盤で成形(機上成形)することが必要です。従来技術における把握精度は径振れ10~20μmT.I.R.程度であり、成形済みジョーを脱着すると把握精度が悪化するため再成形が必要となります。
本技術は、BRチャックとTnut-Plus(特殊Tナット)で構成されます。BRチャックの把握精度は、
実力値0~5μmT.I.R(保証値10μmT.I.R.以下)と圧倒的に良く、Tnut-Plusをあわせて使用すると、ジョーを脱着しても成形直後の把握精度を維持するため、ジョー再成形が不要になります。
また、BRチャックは、ワーク浮上りや回転による把握力損失などの性能に関しても、従来タイプを凌駕します。
20世紀半ばにNC旋盤が発明され、それにあわせてチャックも、手締めチャックから油圧シリンダ駆動のパワーチャックに進化しました。本技術は、パワーチャックが生まれてから半世紀の常識を打ち破る革新的イノベーションです。旋盤加工の品質や生産性を大きく向上させ、ものづくりの根幹を支えていくものと確信しています。

技術の詳細は日本機械学会Webサイトの下記リンクの4ページ目にあります。ご興味がある方はご覧ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/300003/att_300003_2.pdf 
BRチャッ
Tnut-Plus
【最後に】
私が北川鉄工所に入社したのは、研究室の先輩が勧誘に来たことがきっかけです。新しい事業を立ち上げたいので、事業内容の発案を含めて一緒に取り組んでくれるスタッフを求めているということでした。その案件は実現することはありませんでしたが、常に新しいものを創りあげることに挑戦してきました。機械工学の歴史は古いですが、粘り強く取り組めば、まだまだイノベーションを起こせる余地があります。次の時代を担う後輩諸氏の活躍を期待します。
 
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