機友会ニュースデジタル版第135回  大上 芳文 教授「『琵琶湖・環境イノベーションセンター』の多角的な活動」

「琵琶湖・環境イノベーション研究センター」は前身の「琵琶湖Σ研究センター」をさらに発展させる組織として2020年4月1日に設立されました.その目的は「学部学科を横断した構成員によって琵琶湖および水源周辺の環境保全と改善を図り,さらに世界の流域環境保全のための学際複合的な研究を進めること」です.
  
 本センターの研究は「水質・土壌・大気・計測技術」の4つのキーワードで表され,琵琶湖を視点としつつ,地球上に存在する湖沼ならびに水源地の,持続可能な環境循環の実現に向けた研究を行っています.琵琶湖周辺の森林資源,樹園地,畑,水田を保全し,琵琶湖を結ぶ物質循環ラインに伴う新規ビジネスモデルを構築,琵琶湖を中心とした地域循環共生圏を創生しようとしています.
  
 一方, 本センターは行政(特に県)との研究交流を行っており,「しが水環境ビジネス推進フォーラム」への参画や,「公益社団法人滋賀県環境保全協会」と共催で年1回のシンポジウムを開催しています. 2022年度も9月22日に「海や湖の豊かさを守ろう」をテーマに,BKCで琵琶湖・環境イノベーションセンターシンポジウムが開催されました.
  
 本シンポジウムではオーストラリアのグリフィス大学や九州大学からの研究者の報告に加え,本学学生による研究発表がありました.さらに特別ゲストとして,立命館守山高校3年の生徒が招かれました.本生徒はサイテック部に所属し,すでに新聞等で報道されたように千葉県幕張メッセで開催された日本地球惑星連合大会やドイツのベルリンで開催された国際陸水学会で研究成果を発表しています.そのために,ぜひ,本シンポジウムでもとのことで招待されました.もちろん,本シンポジウムでは高校生の発表は先例がありません.
  
 彼女の発表テーマは「琵琶湖におけるマイクロチップの個体数密度と成分」です.はっけん号に乗り,琵琶湖の北湖と南湖の2箇所でマイクロチップの採集を2019年3月から2022年7月の間に25回行いました(図1).そして,マイクロチップのサンプルを蛍光顕微鏡で観察し,整理,分析,考察しました(図2~4).その結果,大型のチップは南湖より北湖の方で多く採集され,小型のチップはその逆になることが明らかにされました.その原因として,琵琶湖内の環流などの複雑な流れが考えられるとのことでした.とても高校生とは思えない時間と手間のかかる研究であり,発表や質疑応答も研究者然としたものでした. このように本シンポジウムでは研究者の卵とも言える高校生や,国内海外からの著名な研究者の発表があり,非常に刺激的で有意義なものとなりました.
  
 以上のように琵琶湖・環境イノベーション研究センターはその目的を遂行するために,固定観念にとらわれず,より多角的な活動を続けています.
  
 (図1~4:立命館守山高校3年 君付茉優さんより提供) 
図1 調査場所とはっけん号
図2 採集と観察の様子
図3 収集されたマイクロチップのサンプル
図4 採集されたサンプルのデータ表
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