はじめまして。2025年4月より、理工学部ロボティクス学科に助教として着任いたしました、小南 貴雅(コミナミ タカマサ)と申します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
私は2015年に立命館大学理工学部ロボティクス学科に入学し、学部4回生の際にセンサ知能統合研究室に所属して、ドローンに関する研究に取り組みました。学生時代は、さまざまなことに挑戦するのが好きで、サークルでは飛行機研究会(鳥人間コンテストへの出場を目指す団体)に参加し、ものづくりに打ち込みました。また、その後はベンチャー企業の支援にも携わるなど、アクティブに活動し、多くの経験を積んできました。
博士課程修了後は、1年間ではありますが環境都市工学科にポスドクとして所属し、宇宙開発利用加速化戦略プログラムに参画させていただきました。そこでは、月面探査車の開発や、地盤走行力学に関する新たなモデルの提案などを行ってまいりました。
研究内容
私は一貫して、人が容易に立ち入れない環境での作業をロボットで代替することをテーマに研究を進めてきました。学生時代では、ドローンを用いた高所での定点観測や点検といった作業に関心を持ち、これらの作業を効率的に行う手段として、「パーチング」と呼ばれる鳥のように構造物にとまる動作の研究に取り組みました。パーチングが可能になれば、ドローンが空中にとどまり続ける必要がなくなり、飛行によるエネルギー消費を抑えて長時間の観測や待機が可能になります。しかし、ドローンでは積載重量に制限があるため、モータなどの追加のアクチュエータを使わずに、対象物に安定して掴まるための軽量な把持機構を実現する必要がありました。
そこで私は、ドローンが着地する際の垂直方向の変位を利用し、接触により受動的に開閉する軽量な把持機構を開発しました。これにより、鳥が電線や枝などにとまるように、追加のモータを使わずに様々な構造物に掴まることを可能にしました。また、どれくらいの力で把持すれば安定してとどまれるのかを力学的に分析し、ドローンの姿勢がパーチングの安定性にどう影響するかも評価しました。
昨年からは、月面での地盤調査を行う月面探査ローバーに関する研究にも取り組んでいます。月面では、重力や大気、熱環境などが地球と大きく異なっており、そこにおける物理現象にはまだ不明な点が多く残されています。そうした未知の環境に関する理解を深めるためにも、ローバーによる探査の重要性は年々高まっています。
月面の表面は「レゴリス」と呼ばれる非常に微細な粉末状の砂で覆われており、ローバーが走行する際にはこの砂との接触が避けられません。そのため、地上とは異なる走行挙動や接地力学が生じ、ローバーの性能や制御に大きく影響します。こうした環境下で安定した探査を行うためには、月面の地盤特性に関する詳細な情報が不可欠です。
私は現在、月面の地盤に対するセンサの設計および新たな計測手法の提案を行っており、まずは地上環境での検証を進めています。将来的には、これらの技術を実際に月面に持ち込み、レゴリスとの力学的相互作用を計測・解析することで、月面における物理現象の解明につなげていきたいと考えています。
学生へのメッセージ
大学生活は、学問を深めることはもちろんですが、さまざまなことに挑戦し、多くの経験を積むことができる絶好の機会だと思います。私自身、これまで数えきれないほどの失敗を経験してきましたが、失敗を恐れず新しいことに飛び込むことで、多くの学びと成長の機会を得ることができました。
振り返ると、それぞれの経験や、そこで出会った人々とのつながりが、自分の「強み」となっています。挑戦を通じて得た知識やスキル、人との縁は、自信へとつながり、社会に出てからもきっと大きな力となるはずです。
大学生の今だからこそ、興味を持ったことには、自分の立場や環境にとらわれることなく、ぜひ積極的に飛び込んでみてください。挑戦には不安がつきものですが、成功・失敗にかかわらず、幅広い経験を積み重ね、人とのつながりを大切にすることが、将来の自分を支える強い土台になると思います。