機友会ニュースデジタル版第155回 新任教員の紹介 上杉 薫 先生
・新任のあいさつ
今年度4月より理工学部機械システム系ロボティクス学科に着任いたしました上杉薫と申します.どうぞよろしくお願いいたします.立命館大学に着任早々「教員も学生も元気が良く研究や学生生活に積極的に取り組んでいる」と感じ感動しました.また,辞令交付式の際も「研究に力を入れていく」という強い想いを拝聴し,胸が高まりました.幸運にも,私もこの輪の中に迎えていただき,今後是非とも研究や教育に取り組み結果を出していきたいと意気込んでいる所存です.また,総合大学ということで文理工様々な研究が共存しており,今後是非,文理工の垣根にとらわれず,学内での共同研究を展開できればとも考えております.この環境を活用して,独創的で先進的な研究を進めていきたいです.
未だ着任して日も浅く慣れていないこともありご迷惑をおかけするかと思いますが,できるだけ早く仕事・環境に慣れて皆様の力になれるように精進いたします.今後とも何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします.
・研究内容
微小力測定技術や微小構造作製技術,ロボティクス技術を用いた,生命・生物機能の解明や工学・医学応用に関する研究を進めております.研究対象は多階層かつ幅広いスケールにまたがり,細胞や分子ロボット,生体組織,動物個体等に関するバイオメカニクス的評価を得意としております.
例えば,細胞や組織の硬さや接着力を測定するための測定システムを開発し,実際に力測定を行ってまいりました.得られた結果をもとに,生物学的な知見に関する議論を進めたり,再生医療用の人工組織(再生組織)の評価技術の提案などを行ってまいりました.また,脂質二重膜カプセル(リポソーム)から成るアメーバ型分子ロボットの開発を目指し,リポソームの機械的特性評価も行っております.更に,筋細胞や筋組織を駆動源とした用いた微小ロボットの開発を目的として,細胞や組織の発生力測定にも携わってまいりました.
また,生物微小表面の機能性解明を目指して接着力や摩擦力測定も行っています.例えば,アメンボの撥水機能解明を目指し,その撥水モデルを提案したり,ホヤや甲虫の表面に存在する微小構造の機能解明を目指し,接着力測定や摩擦力測定を行っております.
研究対象のスケールは数マイクロメートルからサブミリメートル程度であるため,ハンドリングや測定の際はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により作製した微小構造体やマイクロ流路を用いることもあります.また,測定する力も小さいことが多く,ナノニュートンからマイクロニュートンレベルの力測定も行っております.更に,細胞や分子ロボットを相手にする場合は専用の蛍光顕微鏡システム(共焦点レーザー顕微鏡システム)なども用いており,以上のように微細加工や微小力測定,微小バイオ観察といった技術を研究の柱としています.
また多くの場合,測定を可能とする市販のシステムが存在しないため,電子工学・機械工学の知識を駆使して当研究室にしかないような特別な装置を開発することもあり開発したシステムをもとに,製品化や特許化も進めております.
・学生さんへのメッセージ
とりあえず一言目としては「一緒に最先端で独創的な研究を進めましょう!」,二言目としては「大学という組織の得意とする『学問・科学への取り組み』を意識しましょう」です.
以前は「大学という自由な環境を活用して,授業や研究ももちろんのこと,部活やサークルに参加したり,遊んだり出会いを作るなり自己責任で楽しみましょう」というスタンスでした.ただ, SNSやAIを誰でも利用できるようになった昨今,物事を論理的に考えて正しい情報を取捨選択できる能力は重要であり,このような能力は大学で学問や科学に真摯に触れることで効果的に獲得・強化できると感じています.特に,多くの人にとって大学生活は,学問や科学に真摯に取り組める最初で最後のチャンスだと思います.また,それなりに高い学費を払ってこの大学に所属しているのだと思います.コストをかけて特定の組織に所属するならば,その組織に所属している内に,その組織の最大の特徴(長所)を積極的に取り込むことこそが「コスパの良い選択」なのではないでしょうか.