「小さく薄く加工するものづくりの研究」
機械工学科 准教授 小林大造
今年の4月に機械工学科に着任しました小林大造(こばやしたいぞう)と申します。宜しくお願いいたします。私の名前は小さい林を大きく造ると書きますが、研究分野としては小さいものを、より小さく、より薄く加工して新しいものを造る研究をしています。卒業研究でマイクロマシン技術と出会って以来、ものづくりの面白さに魅せられ、特に薄膜材料と微細加工を応用したデバイス研究(光電変換素子・バイオセンサ等)に取り組んできました。これからは材料科学にさらに踏み込んだものづくりの研究を展開したいと考えています。
さて、この4月にスタートアップした私たちの研究室の名前は画数が大変多いですが「薄膜機械電子物性研究室」といいます。現在、一期生の学生たちと力を合わせて新しい研究テーマのスタートアップに励んでいます。主に蒸着やめっきなどの薄膜加工技術により光機能材料・トライボロジー材料をデバイス応用へつなげていくための基礎研究に力を入れていきす。薄膜加工技術を用いると、透明なガラスや柔らかいプラスチックフィルムなどの基板の上にでも様々な機能デバイス(例えば光センサ)を搭載することが可能になります。そのための微細加工や薄膜成長技術を発展させる研究に力を入れています。
現在、注目している薄膜材料の一つは「カルコゲナイド」といわれる化合物系材料です。カルコゲン系元素といわれる硫黄、セレン、テルルなどの元素表でのⅥ族(最近は16族)およびその化合物のことを「カルコゲナイド」といいます。Wikipediaによると硫黄、セレン、テルルの3つの元素が様々な鉱石の主成分となっていることからギリシア語の「石を作るもの」という意味で「カルコゲン」と呼ばれてきたそうです(語源には諸説あるようです)。図1 (a)に原料の写真を示します。原料の状態では確かに小さな鉱石といった雰囲気です。原料を蒸気にして膜を作ると図1(b)のような薄膜になり、さらに加工すると図1(c)のような薄膜光センサ(フォトダイオード,光に応答して電流を発生します。)になります。この化合物系は機械的にも電気的にも色々な興味深い性質を持っています。カルコゲン元素は腐食性が強く鋼やニッケルに添加すると脆化を起こしますが、カルコゲン元素とモリブデンやタングステンの化合物表面は高い潤滑性を示すため固体潤滑材料としても用いられています。またカルコゲン元素と銅、インジウムの化合物は性能の優れた半導体材料になるため太陽電池としても実用化されています。この他にも様々な機能性薄膜材料を用いてサイエンスとエンジニアリングの世界をつなぎ、学生とワクワクできる研究にチャレンジしていきたいと思っています。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
図1. 薄膜技術を用いたものづくり(原料→薄膜→デバイス、基板を除いた膜厚はたったの0.002mmです。)