機友会ニュースデジタル版第79回 「2018年度機友会奨励賞受賞者の方から受賞の感想いただきました」 浅井晨吾さん

機械工学科卒業 浅井晨吾

この度は機友会奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。未熟な私をご指導ご鞭撻いただきました吉岡先生をはじめ、環境流体工学研究室の先輩方、同期の皆様に、心より感謝申し上げます。

私は、垂直軸風車に用いるブレード断面の形状検討を行いました。垂直軸風車は、風向依存性を持たないため、いかなる方角からの風に対しても、風車を回転させることができます。この特徴を生かすため、当研究室では、垂直軸風車のブレード断面の形状に研究室オリジナルの翼型である「勾玉形」が提案されています。本研究では、風車出力の向上を目指し、形の異なる81種類の勾玉形を作成し、数値計算と実験を行い、風車に適した翼型を選定しました。

私は、今年の春、社会人になりました。1年間ではありましたが、研究活動を通して、今後も大切にしようと心に誓った学びがあります。「ツールの使い方ではなく、理屈を理解する」ことです。当たり前のことですが、研究中に犯したある失敗がきっかけになりました。事前検討で行った数値計算にて、計算ソフトを魔法のツールと思い込み、理屈を理解せず使用し、誤った計算を行いました。理屈を理解していなかったため、計算結果の妥当性についての判断ができず、指摘されるまで気づかずに無駄な計算を続けていました。当時の私は、数値計算ソフトを初期条件や境界条件の値さえ入力すれば、ソフトが自動的にメッシュ生成などの前処理やソルバーの選択を適切に行い、簡単に正しい値を出力してくれる便利なツールだと勘違いをしていました。失敗後、改めて数値計算の理屈について少し学び、いかに愚かな考えだったか、そして、英知を養わなければ素晴らしいツールを用いることは不可能であるということに気づきました。便利や有能という言葉に飛びつき、ツールを使いこなせていると思い込んでしまうことの怖さを学びました。

現在、私は入社して数か月のエンジニアの卵です。AIとの関わりが増えてくると思います。失敗した経験から、AIなど便利と思えるツールについての理解を深めるよう心がけています。理屈を理解した上で、何が得意で何が不得意なのか、どこまで発展しているのか、そして、正しく扱うためにどのような教養が必要かなど、自分で考えられる能力を身につけなければならない。「エンジニアとして、ソフトの使い方を学ぶことが大事なのではなく、正しく使うための理屈を理解することが大切である」という本学のある講義での教授の言葉が記憶から浮き上がり、心に留まりました。

以上の経験から、正しくツールを扱うだけでなく、その重要性を周りのエンジニアに波及できるようなエンジニアを目指したいと思います。ツールとエンドユーザーの間にエンジニアが、技術の進歩発展の速さに負けぬように英知を養わなければ、ツールとエンジニアの間にも隙間が生まれてしまいます。エンジニアが知らぬ間にツールに飲み込まれるということはあってはならないし、失敗は許されません。正しく判断し、正しくツールを扱い、社会に貢献できるエンジニアを目指し、自己研鑽して参ります。

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