機友会ニュースデジタル版第143回 新任教員の紹介 加古川 篤 先生

 理工学部ロボティクス学科に着任しました加古川篤と申します.私は愛知県名古屋市の工業地帯で生まれ育ちましたが,母方の実家が奈良県の東吉野村にあったため,子供のころは山村でも長い時間を過ごしました.
 2015年3月に立命館大学大学院の機械システム専攻で博士号を取得し,その後,同年4月から助教,2019年4月から講師として2022年3月までロボティクス学科でお仕事をさせていただいておりました.2022年4月からは立命館大学総合科学技術研究機構の研究教員(准教授)を務めておりました.この度,ご縁があって再びロボティクス学科に戻って参りました.

「研究内容」 
 私は学生時代から細い管の中を移動するロボットの研究を行ってきました.ロボットが狭い空間内を縦横無尽に走り回るためには,非常に厳しい制約条件下で要求仕様を満たすための設計思想が求められます.管内の空間はとても限られているため,要素部品をいくらでも搭載できるわけではありませんし,常にロボットが様々な形状の環境に接触しながら移動するため,接触力を臨機応変に調整する機能も必要です.そこで,モータをバネに置き換える方法や歯車などの伝達機構を工夫して機能低下を最小限に抑えながらアクチュエータ数を減らす研究に取り組んできました.接触力の調整方法については,高分子材料を用いた独自開発のトルクセンサや損失の少ない減速機を用いたセンサレストルク制御の技術を提案してきました.最近は,狭い空間だけでなく,これらの技術を応用したロボットアームや水中ロボットへ展開する研究も始めました.
 実験室だけに留まらず,大学外での実地試験にも力を入れています.2023年2月には滋賀県草津市の内径75mmの実際の下水道管にロボットを通し,汚水を含んだ内部の映像を撮影することに成功しました.試験の様子については以下の動画で紹介しています.
https://youtu.be/8HK1HUB_s_Q

 2023年4月にはアクチュエーション研究室を立ち上げました.ここ数年でCPS(Cyber-Physical System:サイバーフィジカルシステム)という言葉が定着してきました.CPSとは,現実世界(フィジカル空間)からセンシングした情報をコンピュータやサーバなどの仮想世界(サイバー空間)に集め,解析し,それを現実世界へ反映(アクチュエーション)して課題解決を図るものです.センシング技術が現実世界の物理量を数値化し,仮想世界で扱うための変換手段であるなら,アクチュエーション技術はその逆であり,現実世界に直接働きかけを行う物理的手段であると言えます.アクチュエーションという言葉は,駆動源を意味するアクチュエータという言葉の派生ですが,アクチュエーションをこの「現実世界(フィジカル空間)に直接働きかけを行う手段」という意味として捉え,現場で役立つロボットの研究開発を推進したいと考えています.

「学生へのメッセージ」 
 今では偉そうなことを言っていますが,学生時代の自分は箸にも棒にもかからないひどい落第生でした.高校生のころは芸術系の道に進みたいと何となく思っていたものの惨敗し,辿り着いた先が立命館大学でした.当然,大学生のころは授業に興味が持てず,勉強せずに課外活動にのめり込んで古民家再生活動ばかりしたり,海外に放浪したりしていました.しかし,人生とは不思議なもので,気づけば母校で教員です.
 たくさん回り道をしましたし,これからも順風満帆ではないかもしれません.それでも今まで生きてこられたのは,鳥肌が立つほど感動できることや尊敬できる多くの人生の先輩方に出会えたからだと思います.人生は「何と」「誰と」出会うかで大きく変化すると思います.表面的なカッコ良さや目先の利益に囚われず,その瞬間の快不快だけで判断せず,自分の奥底に燃え上がる炎が何であるのか?を大学生活でじっくり見極めてほしいです.
 やりたいことは「見つけるもの」ではなく,結果的にそう「なっていくもの」であることの方が多いと思います.遠回りをしても良いので,多様な経験をし,見聞を広め,悩み苦しみ,無駄なことだと思えることでも恐れずに挑戦してほしいです.何年か経った後に必ず1本の線で繋がるはずです.

加古川研究室ホームページ https://actuation-lab.com/ 
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