2021年度「岡倉天心国際賞」を受賞して 酒井達雄、吉岡修哉、大上芳文 筆者らは、地球温暖化や気候変動問題の解決に向けて、温室効果ガス(CO2)の排出低減が人類存続の根本的な重要課題と考え、2010年頃からエネルギー源を化石燃料から風力・水力・太陽光などの各種自然エネルギーに切り替える技術開発に取り組んできました。とくに垂直軸タイプの独自の風力発電、小型ダムやビル排水によるマイクロ水力発電、ラセン水車による潮汐発電など、広範な自然エネルギー利用技術の確立を目的にして種々の共同研究を展開し、多くの研究成果を報告してきました。一方、このような地球規模の課題解決に当たり、多国間の連携や国際的な共同研究が重要になります。この点に鑑み、第一段階の試みとして東アジア地域連携による低炭素社会実現に向けた共同研究や国際シンポジウム開催などを頻繁に重ねて参りました。 このような経緯の中で、日本および中国の多くの研究者・技術者が幅広く連携し、各個別研究者や共同研究グループごとに貴重な研究成果が蓄積されてきており、一連の研究成果を綜合して1冊の単行本として編集・出版することとなり、2021年に以下の書物がSpringer社より出版されました。 “East Asian Low-Carbon Community: Realizing a Sustainable Decarbonized Society from Technology and Social Systems”, edited by Weisheng Zhou, Xuepeng Qian, Ken’ichi Nakagami, Springer (2021). 本書は、いくつかの研究グループごとに共同研究の成果を纏め、それぞれ独立した章として共同執筆する方式で編集・出版されたものです。全22章からなる大書になっていますが、筆者らが担当したのは第12章であり、前述のとおり、各種自然エネルギーを効果的に組み合わせることで、低炭素社会を実現する具体的な解決策が提示されています。当該章のタイトルおよび執筆者については、以下のとおりです。 Chapter 12 (pp.215-239.) “Building a Global Low-Carbon Society Based on Hybrid Use of Natural Clean Energy” by Tatsuo SAKAI, Shuya YOSHIOKA, Yoshifumi OGAMI, Ryohei YAMADA, Yusuke YAMAMOTO and Nabila Prastia PUTRI. 第4著者以降の3名は本学大学院理工学研究科在籍中に関連テーマの研究に取り組んだ当時の院生諸君であり、改めて在学中の努力に敬意を表します。 さて、このたび受賞の「岡倉天心国際賞」は International Academic Society for Asian Community [国際アジア共同体学会] という学会の賞であり、賞の趣旨説明によれば優れた国際連携による出版物に対して贈賞されるもので、執筆者全員が受賞者になるとのことです。筆者らはこの学会の存在を知りませんでしたが、会員対象の贈賞でなく広く社会一般の出版物を対象にして選考されているようです。候補出版物の推薦や選考のプロセスについては、筆者らは理解できておりませんが、本書の編集代表者宛に上記学会より受賞決定の連絡があり、昨年12月2日参議院議員会館で開催された当該学会2021年度大会で受賞された旨の連絡を頂いております。 筆者らは、このたびの受賞に際し、当該テーマの研究推進に関与頂いた当時の院生・学生諸氏の参画と尽力に改めて謝意を表すとともに、本書の出版にあたり種々のご支援を頂いた編集者やSpringer社の担当者に衷心より謝意を表します。また、この度の受賞に恥じないように、今後も当該テーマの研究促進に一層精進する所存です。