シリーズ「機械系教員が語る鉄道よもやま話③」

理工学部機械工学科 上野 明 教授の「機械系教員が語る鉄道よもやま話③」

 近鉄編(その3 近鉄特急,その他):

 「近鉄特急」という言葉は,近鉄の代名詞であると言っても過言ではありません.近鉄では戦後まもない1947年に,座席指定式有料特急の運行を始めます.1957年には,2階建て車両を含むビスタカー(10000系)が登場します.2階建ての高速走行可能電車は世界初でもありました.この車両は,冷房装置,シートラジオ(客席にラジオ用イヤホンが設置されている),列車用公衆電話を備えるとともに,複層ガラス式完全固定窓を採用しており,その後に登場する国鉄(現・JR)20系特急電車(通称:こだま号)や,国内の有料特急電車の設計にも影響を与えたと言われています.

 初代ビスタカー(10000系)は試作的要素の強い列車でしたが,1959年には量産型(2代目)ビスタカー(10100系),1978年には3代目ビスタカー(30000系)が登場します.

 その間,修学旅行専用のビスタカー(通称:あおぞら号)も登場します.あおぞら号は世界初のオール2階建て電車です.その後,ビスタカーに代わり,1988年登場のアーバンライナー(21000系)などが近鉄特急の顔になります.また,ワンランク上の豪華さを指向したプレミアム特急(通称・しまかぜ号)50000系が2013年から運転を始めています.

 日本の鉄道の多く(JR,関東の私鉄など)は,軌間[レールとレールの間隔]は1067mmを採用しています.新幹線や,近鉄を含めた関西の私鉄の多くは,軌間1435mmを採用しています.逆に,1067mmより狭い762mmの軌間もあり,軽便鉄道あるいはナローゲージなどと呼ばれています.現在,国内で営業運転を行っている軽便鉄道は3路線あります.3路線のうち2路線は近鉄の系列会社が運用中であり,近鉄四日市駅を起点する「四日市あすなろう鉄道(旧・近鉄内部・八王子線)」と,近鉄桑名駅(正確には,西桑名駅)を起点とする「三岐鉄道北勢線(旧・近鉄北勢線)」です.マッチ箱のような小さな車両がトコトコと走り,現在も地元住民の足となっています.

 ところで,桑名駅から南に少し下った所に,世界的にも珍しい場所があります.短い距離ですが,標準軌(近鉄名古屋線),狭軌(JR関西線)とナローゲージ(三岐鉄道北勢線)が並行して走っている風景を眺めることができるスポットです.(※3つ目の路線は黒部峡谷鉄道) 
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