シリーズ「機械系教員が語る鉄道よもやま話⑤」

理工学部機械工学科 上野 明 教授の「機械系教員が語る鉄道よもやま話⑤」

 超高速鉄道編(その2 リニアモーターカー(2)):

 前回述べた「三つの壁」の一つである「蛇行動」については,戦後の国鉄では,GHQにより職を解かれた航空機開発技術者を国鉄へ招き,島 秀雄によって当時の鉄道技術研究所内に設けられた「高速台車振動研究会」にて,研究が進められました.その結果,航空機における「フラッタ」と鉄道車両の「蛇行動」は同じ現象であることを見い出し,東海道新幹線において「蛇行動」を抑えるための台車(DT200型)が開発され,0系新幹線車両に採用されました.

 二つ目の壁である電化された車両への「電力供給方式」に関しては,架線とパンタグラフの密着性を向上させるための「下交差式小型パンタグラフ」や.スパーク低減のための高電圧(低電流)方式[交流25000V方式]が新幹線に投入されました.しかし,時速300km以上での安定した電力供給には困難が多いため,当時の国鉄は,列車用ガスタービンエンジンの研究開発も行いましたが,騒音の問題もあり,結局は,非接触で電力を供給可能な「超電導方式」の研究開発を継続しました.

 三つ目の壁は前述のように,鉄製車輪と鉄製レールの間の粘着力の問題でした.当時は,車輪とレールの粘着力は走行速度とともに低下し,時速300kmを越えた付近で車両の走行抵抗が粘着力を上回るとされており,如何に車両の動力源をパワーアップしても,車輪が空転するだけで速度向上は望むことはできないと考えられていました.そのため,当時の国鉄は,第二・第三の壁を克服すべく,非接触で電力供給ができ,車輪とレール間の粘着力に頼らない,超伝導磁気浮上式鉄道の研究開発に踏み切り,その後も研究開発を継続し,現在に至りました. 
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