「ロボットハンドのオープンソース化」
ロボティクス学科の小澤と申します。今回は、小澤が運営しているマニピュレーション研究室で公開しているロボットハンドのオープンソースプロジェクトについてご紹介させていただきます。
オープンソースとは一定の条件内でソースの自由な利用を認めるもので、この流れはコンピュータのソフトウェアの文化として広がってきました。一方、ハードウェアに関するオープンソースの流れは、その製作過程の統一化の困難さ等から、10年程前までは殆ど見られませんでした。しかしながら、近年、3Dプリンタやレーザーカッタのなどが小型化し、家庭でも持てるような価格帯(数万円~)で普及するようになり、ハードウェアの特別な知識がなくとも簡単に複雑な部品が作れるようになってきました。そのため、様々なハードウェアの図面や印刷用のファイルなどを公開することでものづくりを促進しようというハードウェアのオープンソース化の動きが活発化してきています。
この流れを受けて、ロボットの世界でもロボットハンドや移動ロボット、ヒューマノイドロボットなど様々なオープンソース化が始められるようになりました。本研究室では教育と新しい伝達系を広めることを目的に2013年度から3Dプリンタで作れるロボットハンドの開発を行い、2016年度初頭にオープン化を開始しました。
(http://www.manipulationlab.se.ritsumei.ac.jp/OpenHand/OpenHand.html)
現在までに複数のロボットハンドやロボットシステムが開発され、そのうち4つのロボットハンドのstlファイルが公開され、利用可能となっています。本研究室で公開しているロボットハンドの特徴は、他で公開されているロボットハンドと比較して大きく二つあります。一つは歯車列を駆動系に使うことであり、もう一つは簡単に組立ができることです。
歯車列とは、歯車を一列に並べたもので、複数の関節にまたがるように歯車列をつなげたものを用います。本研究室では、この歯車列は駆動力を伝達するのみならず、歯車列をあえてモータにつながないことで関節間の拘束を生み出します。これらをうまく組み合わせることで、少ないモータであたかも指らしい動きを生み出すような機構を作っていきます。
組み立ては可動域や関節構造を考慮したはめ込み構造を導入し、基本的にネジや接着剤を使わないで行えるように設計を工夫しています。ロボットの組み立てで一番難しいのは伝達系です。従来の多くのロボットハンドはワイヤなどで引っ張るタイプの駆動系を採用しており、実はこのワイヤが組み立てを難しくします。一方、歯車列を用いるとはめ込みが簡単に行えるようになります。これにより、小学生でも指が数分で簡単に組み立てられるような簡単な構造を実現できるようになりました。これらのロボットハンドは他の研究室での研究に使われたり、低回生の研究室体験にも取り入れられたりしています。