機友会ニュースデジタル版第161回 新任教員の紹介 栗生 識 先生

新任のご挨拶

2026年4月より機械工学科 小西研究室に助教として着任いたしました、栗生識(くりう さとる)と申します。出身は埼玉県で、大宮の街で育ちました。学部は明治大学、大学院は東京工業大学(現・東京科学大学)に進学し、修士・博士の学位を取得しました。

学部時代は自動車の足回りに関する研究に取り組んでいましたが、将来的には医療機器開発に携わりたいと考え、医工学分野の研究が盛んな東京工業大学へ進学しました。当初希望していた医療機器開発のテーマには空きがなく、細胞培養用マイクロ流体デバイスの開発に取り組むことになりました。しかし研究を進める中で、自分のアイデアが実際のデバイスや実験結果として形になっていく面白さに魅了され、研究を仕事にしたいと考えるようになり、博士課程への進学を決意しました。

博士課程では、「生体臓器の中ではどのような流体現象が起こっているのか」という興味から、「マウス小腸組織内流れを計測するマイクロ流体デバイスの開発」をテーマとして研究を行いました。マウスから採取した小腸組織を流路化し、外部から空気圧駆動型アクチュエータで変形させることで腸の蠕動運動を模擬し、その際に生じる流れを世界で初めて観察しました。

学位取得後は、東京大学生産技術研究所にて助教として勤務し、gut-on-a-chip の開発や、がん患者血液中に存在する循環腫瘍細胞(CTC)の分離研究に従事しました。

Gut-on-a-chip の研究では、フッ素系不活性液体と培養液の界面上で腸管由来細胞を培養できる新しいデバイスを開発しました。従来、細胞はプラスチック製の薄膜上で培養されることが一般的でしたが、薬剤が膜へ吸着してしまうという課題がありました。本手法では人工膜を用いずに細胞培養が可能であり、将来的には、生体により近い腸管環境を人工的に再現できると期待されています。

また、CTC分離研究では、微細なスリット構造を有するフィルタを用いて血液中からがん細胞を分離する研究に取り組みました。既存システムでは、赤血球除去試薬や流れによるせん断力によって細胞が損傷を受けることが課題となっていたため、私は「がん細胞をダメージレスかつ高効率に回収するプロトコル」の確立を担当しました。

本研究では大量の血液検体を必要としたため、共同研究先であるフランス・リールのがん研究所 ONCOLille に滞在しながら研究を進めました。日本で基礎検討を行い、フランス滞在中に集中的に実験を行うという形で研究を継続し、最終的には臨床応用に耐えうるプロトコルを構築することができました。文化や研究環境の違いに戸惑うこともありましたが、同じ目標に向かって研究に取り組む貴重な経験となりました。

立命館大学では、研究者として成果を積み重ねられるよう、日々精進してまいります。一方で、これまでの私自身、多くの先生方や共同研究者、友人との出会いに支えられながら研究を続けてきました。自動車工学から医工学へと研究分野を移し、国内外でさまざまな研究環境を経験する中で、研究は一人で完結するものではなく、人とのつながりの中で発展していくものだと実感しています。

そのため、今後は自身の研究を発展させるだけでなく、教育・研究活動を通じて、学生の皆さんが新しいことへ挑戦する楽しさや、自ら考え試行錯誤する面白さを感じられるような環境づくりにも力を入れていきたいと考えています。また、研究の魅力を伝えることで、将来的に博士課程への進学や研究者の道を志す学生が一人でも増えれば、大変嬉しく思います。

まだ着任したばかりではありますが、学生・教職員の皆様との交流を大切にしながら、研究・教育の両面で大学に貢献できるよう努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

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