機友会ニュースデジタル版第16回 スポーツ健康科学部 伊坂忠夫 先生 「スポーツ健康科学部の伊坂です!」

「スポーツ健康科学部の伊坂です!」

スポーツ健康科学部・教授 伊坂忠夫

機友会のみなさん、ならびに理工学部機械システム工学科のみなさん、大変ご無沙汰しております。同じ、BKCのキャンパスにいますので、良く顔を会わせる先生方も多く、いまでもお力添えを頂いています。

1992年4月に理工学部に着任し、機械システム学系の先生方には大変お世話になりました。特にロボティクス学科に所属させていただき、川村先生、有本先生の研究室にて卒研、院生の研究にも関わらせてもらい、当方の研究も大きく前進しました。2010年に、スポーツ健康科学部ならびに大学院スポーツ健康科学研究科の設置に伴い異動するまで18年間お世話になりました。異動しましても、研究ならびに教育、社会連携においても連携させてもらっています。

今回、このニュースを書かせていただく機会を得ましたので、すこし学部・研究科の紹介と小生の研究室、今後の研究について紹介をさせてもらいます。

スポーツ健康科学部・スポーツ健康科学研究科の特長

スポーツ健康科学の分野は、身体活動・運動・スポーツと関わって人間を扱う学問分野です。そのため対象とする人間についても、遺伝子から人体、そして社会・集団までを扱います。つまり生物学的な観点から遺伝子レベルから全身レベルまで追求する自然科学的アプローチとしての「ヒト」、発育発達の観点、教育学、心理学などの人文科学的なアプローチとしての「ひと」、そして社会・組織の観点から社会学的アプローチとしての「人」を、総合的・学際的に学ぶ世界的に見てもユニークな学部・研究科です。

そのため、スポーツ健康科学部ならびに大学院スポーツ科学研究科のビジョンは、次の通りです。

ヒト・ひと・人を科学し

プロフェッショナルとして

未 来 を 拓 く

スポーツ健康科学部・同研究科は2010年度に開設され、2012年度より博士課程後期課程をスタートさせました。本格的に「スポーツ健康科学」を追求する研究大学院を目指す体制が整っています。本研究科の博士前期・後期課程の入学定員は西日本で最大です。同時に本研究科の教員の論文ならびに学会発表件数、研究費採択率などは、教員の高い教育力・研究力を示しております。このような活発な教員による個別ならびに集団的な指導によって、「スポーツ健康科学」という学際分野を総合的に学び、研究する環境が最大の特長です。

博士前期課程は、スポーツ健康科学に関わる総合的・学際的な専門知識を持ち、高度な実践力とリーダーシップを有して社会の発展に貢献する高度専門職業人を養成することを人材育成目標としています。スポーツ・パフォーマンスや健康の維持・増進を科学的根拠に基づき解明する教育・研究を行う「身体運動科学領域」と、スポーツ健康科学分野における教育・マネジメント力量を向上する教育・研究を行う「スポーツ人文社会科学領域」の2つの領域に分かれています。ただし、所属する領域に限らず、スポーツ健康科学全体を俯瞰できる視点を持ち、社会のニーズに対応する高い能力を身につけてもらっています。

博士後期課程は、スポーツ健康科学分野において先端の研究成果をあげ、その成果を実践に結びつけるとともに、研究プロジェクトなどにおいてリーダーシップを発揮することができる研究者の養成を目的としています。従来の専門に特化した分析的な研究を行うのみでなく、新たな学問領域や複合領域を開拓し、独創性を持った研究を進める力量を持ち、研究成果を実践に応用できる高度な研究者、高度な実践力を持つ専門職業人を養成しています。

応用バイオメカニクス研究室

上述したような学部・研究科の学部生、院生ならびに研究者の先生方と教育研究に携わっています。研究室の名前は、応用バイオメカニクス研究室です。下の図2に示したように、人間の日常動作からスポーツ動作までを、運動学的・運動力学的に解析するとともに、障害予防に関わる臨床的な研究、人間の身体能力向上のためのトレーニング機器開発、運動制御メカニズムの研究を行っています。

得られた研究成果は、①人類の限界へのチャレンジをサポート、②身体能力・技術を高めるトレーニング、③動作・運動制御による運動機能の維持・向上、に貢献することを目指しています。これまでに博士1名、修士16名を送り出すことができました。

人生100年時代に向けて

 研究室における研究だけでなく、現在では研究プロジェクトを取りまとめる役割もするようになってきています。ご存じのように、日本は世界トップの長寿国です。2050年には、百歳長寿は100万人に達するといわれています。これまでのように、20歳前後(高校、大学)まで学び、その後、社会人として60歳もしくは65歳で定年を迎えるまで、約40年働き、その後リタイアしてから約20年過ごす、というパターンを踏襲できなくなります。これは少子化とも関連し、定年を80歳まで引き上げる企業もでてきたように、働く期間が従来よりも長くなるのは間違いありません。

これからの人生100年時代を見通し、今後の未来像として政府はICTを最大限に活用し、サイバー空間と現実世界をつなぎながら、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」の実現を掲げ、Society 5.0として強力に推進することを昨年決定しました。そして、その実現に向けて具体的な戦略分野を5つあげていますが、第一番目に出てくるのが「健康寿命の延伸」です。この健康寿命の延伸という柱の中で示されている施策に、技術革新を活用し健康管理と病気・介護予防、自立支援に軸足を置いた、新しい健康・医療・介護システムの構築があげられております。具体的には、ビッグデータを利活用した個人の予防・健康づくりの強化、遠隔診療・AI 等の ICT やゲノム情報等を活用した医療、ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性の向上などがあげられています。このような医学、工学、情報科学、健康科学の叡智を活用してヒトの身体を扱い、人間の生活支援、活動の向上に貢献する学問、研究が非常に注目されてきています。

このような方向に向けた研究の取り組みとして、本学が中心となって進めているCOI「アクティブ・フォー・オール」拠点があります。肌着のようなスマートセンシングウエアによりバイタルデータを自然に取得し保存し解析し、さりげないタイミングで個人にフィードバックを与えるようにして、かつ同一空間内で多種目多目的の運動が間仕切りなく空間シェアリング技術を使い多世代が交流できるシステムを構築しています。これは運動を特別なものとするのではなく、テクノロジーを活用して多世代が自然と交流しながら、知らず知らずのうちに動けるように、健康になるように、という「運動の生活カルチャー化」を目指しています。

この研究拠点の中心的なテーマである、「スマートウエアの開発」は、ロボティクス学科1期生の塩澤先生(スポーツ健康科学部)が推進しています。また、このCOI拠点のアドバイザーとして、飯田先生、津田先生、牧川先生には、日常的に指導してもらっています。機械システム学系の先生方とは、これからもお世話になり続けることになります。

いずれにしましても、ものづくり、ことづくり、しかけづくり、ひとづくりを含めて、それぞれの立場から、未来へアプローチして、人生100年時代を迎えても、長寿になってもより恩恵を受け、年を取るのが楽しいよ!と世の中の皆さんが心から言えるように、研究、教育で貢献したいと願っています。

引き続き機友会のみなさん、機械システム学系のみなさんからのご支援とご協力をお願い申し上げます。

*「Active 5」というエクササイズをCOI拠点で作成しました。キッズ、一般、シニアのそれぞれの振り付け(エクササイズ)があります。是非、職場で、家庭で楽しみながら実践してみてください。3分間です。

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